外食企業が生産現場に目を向ける理由
最近の円安や原材料の高騰、さらには海外業者との激しい競争が外食企業を取り巻く調達環境を厳しくしています。特に飲食店では94.6%が原材料の仕入れ価格の上昇に直面しており、安定した供給が困難になってきました。これは単に価格の問題ではなく、品質や量をも脅かす深刻な状況と言えるでしょう。
このような背景から、多くの外食企業が「仕入れる」から「共に育てる」へとシフトし始めています。特に、くら寿司が進める取り組みが注目されており、養殖や直販の仕組みを活用して生産者と密接に連携することで、安定的な調達が可能になるモデルを模索しています。
新たな取り組みとモデルの構築
1. 生産現場への参入
くら寿司は、2010年から「天然魚プロジェクト」を始め、120以上の漁協や漁港と直接取引を行っています。このプロジェクトにより、定期的に鮮魚を提供し、漁業関係者の収入安定化に寄与しています。特に注目すべきは、2021年に設立した「KURAおさかなファーム」です。このファームでは、オーガニックな魚の養殖に力を入れており、2022年度からの出荷量が約14倍に増加する見込みです。
2. スマート養殖
さらに、「KURAおさかなファーム」は、AIやIoTを活用して養殖の効率を向上させています。具体的には、給餌の最適化を図るスマート養殖技術を導入し、労働負担を軽減しつつ生産性向上を実現しています。生育データをAIが学習することで、養殖にかかるコストを削減し、後継者不足という課題にも対応しています。
直販の強み
この取り組みの一環として、くら寿司は自社の水産物の流通を独自に管理し、流通コストを抑えつつ高品質の食材を提供しています。特に、「みかんブリ」といった新しい養殖魚の開発や、食材の多様性を考慮した商品提供に力を入れています。
水産協同組合との信頼関係の構築
外食企業が生産現場に進出する際には、生産者との信頼関係が重要です。くら寿司は長年の取り組みを通じて地域の生産者と信頼関係を築いており、農業や漁業の現状についても意見交換を行っています。このアプローチにより、持続可能な養殖モデルが生まれています。
コストとリスクの軽減
生産者にとっても、安定した流通ルートが確保されることで経営の予測が立てやすくなり、リスク軽減に繋がります。また、後継者不足の問題にも新しい技術の導入によって、若い世代が漁業に興味を持つきっかけとなっています。
漁業の未来
漁業は減少傾向にあり、従事者も高齢化が進んでいますが、くら寿司の取り組みは水産業にとって希望の光です。新しいモデルを確立することで、生産者からの信頼を得ながら、水産業の再生を目指しています。生産から販売までを一貫して行うことで、消費者にも新鮮で高品質な商品を提供することができ、さらには地域経済にも貢献しています。このように、外食企業が進める「共に育てる」モデルが、持続可能な未来を切り開いていくことに期待が寄せられます。