老舗とんかつ専門店KYKの挑戦
全国にファンを持つとんかつ専門店KYKが、近年の市場環境の変化に対応するため、アプリ開発プラットフォーム「iSIN(イシン)」を活用することを決定しました。これにより、新たな顧客接点を構築し、常連客の獲得を目指しています。今回は、KYKを運営する株式会社曲田商店の取り組みとその成果を詳しく紹介します。
導入の背景と課題
KYKは創業から70年以上の歴史を持つ老舗ですが、これまで従来の紙スタンプカードとLINE公式アカウントに依存していました。毎年約10万枚のスタンプカードを発行・回収しなければならず、顧客のポイント情報も把握できない状況でした。このような方法では、顧客にとって「貯める楽しさ」や「使う楽しさ」を感じてもらえないと感じていたのです。
さらに、LINEアカウントの友だち数は13万人と多数いたものの、配信が月2回に制限されるため、本当に伝えたい情報をタイムリーに届けられないジレンマがありました。その結果、従業員も業務の負担が増え、顧客へのクレームが増えてしまっていました。
自社アプリ導入の決め手
営業部の山田良樹氏は、自社アプリの必要性を次のように語ります。「アプリ導入がないと、顧客の愛着がKYKではなくLINEに向いてしまうリスクがあります。既存のお客さんとの関係を深めるには、我々自身の顧客資産を大切に育てないといけない」との思いからアプリ導入を決断。特に、最初のダウンロード数が期待できないリスクを受け入れた上で、長期的な関係性構築を目指しました。
アプリ導入後の成果
アプリを導入した結果、リリースから半年で34,116人のユーザーを獲得し、月間アクティブユーザー(MAU)も11,000人に達しました。また、クーポンの平均利用率は29.26%と、LINEでの利用率よりも19ポイント向上しました。これにより、顧客とのコミュニケーションが活性化し、実際に「アプリを教えてくれてありがとう」といったポジティブなフィードバックが増加。
レジ作業へのクレームもほぼゼロになり、スタッフの接客満足度も向上したとのことです。この背景には、アプリの使いやすさを重視した設計があり、特に年齢層の高い顧客にも配慮したシンプルな操作性が評価されています。
今後の展望
今後、KYKは顧客にとっての特別感を更に強めることを目指し、ポイントキャンペーンなどの施策を通じて顧客データを活用したパーソナライズ配信を進めるとのこと。従業員も巻き込んで、店舗全体で顧客の喜びを演出するための取り組みを続ける意向です。
まとめ
KYKのアプリ導入は単なる顧客サービス向上にとどまらず、従業員のモチベーションや業務効率の改善にも寄与しています。デジタル化が進む中で、人と人との温かいつながりを重視しつつ、イノベーションを推進するKYKの挑戦は、他の飲食業界にも参考になる事例です。アプリを通じて、これからの常連客づくりに期待が高まります。