AIで遺伝子の時間を解読する新技術Tocky
熊本大学の小野昌弘特任教授らの研究チームが、独自に開発した蛍光タイマー技術「Tocky」を用いて、細胞内での遺伝子活動の「時間的な変化」を高精度で可視化する画期的な手法を確立しました。この成果は、今後の免疫研究や治療法の開発に向けた新たな基盤を提供するものとなります。
Tocky技術の概要
Tockyは、特定の遺伝子がいつ発現したのかを示すために、蛍光の色変化によって時間情報を記録できる技術です。これにより、各細胞の転写履歴を生きている状態で観察することが可能となります。この手法では、遺伝子調節配列にCRISPRを用いて変異を導入したTockyマウスから得たデータを、深層学習の技術を駆使して解析します。
研究の成果
研究の結果、免疫に関する遺伝子の時間的制御が加齢や遺伝子配列の変化によってどのように影響を受けるかが明らかになりました。これまで、遺伝子の働きを生きた細胞の中で時間の流れに沿って観察することは困難でしたが、Tockyの技術によって、初めてその詳細な分析が可能になりました。
研究の背景
私たちの体内では、遺伝子が「いつ」働くのかというタイミングが重要な意味を持ちます。遺伝子がスイッチを入れる時期やその強さが変わることで、細胞の特性に影響を及ぼします。しかし、この時間的な変化を詳細に調べるのは容易ではありませんでした。Tockyの開発により、この難題を解決するための一助となることが期待されています。
今後の展開
本研究の成果は、免疫の働きや老化、がんなど様々な病気のメカニズムを時間の経過に沿って理解する上で大きな助けとなります。今後は、他の遺伝子や細胞にもこの手法を応用することで、新たな治療法の開発へとつながる可能性があります。
用語解説
- - Tocky: 遺伝子の発現時間を蛍光の色変化として記録する技術。これにより細胞内の活動が観察可能。
- - CRISPR: 遺伝子配列を正確に編集するための技術。ゲノム編集に広く使用されている。
- - 転写活性: DNAの情報がRNAにコピーされる能力を示す指標。
発表論文
この研究の詳細は、令和7年7月1日に『Nature Communications』に掲載されました。論文のリンクは
こちらです。
今後、Tocky技術がどのように進化し、医学の分野に貢献していくのか、研究の進展から目が離せません。