体験型研修が外食産業を救う！くら寿司の人材育成法とは

近年、日本の外食産業は大きなチャレンジに直面しています。特に深刻な人手不足が、業界の成長を脅かしているのが現状です。日本経済新聞社による調査（2024年度飲食業調査）では、回答した主要外食企業297社のうち、約25.4%が国内出店計画を減少させたと回答しました。一方、求職者を多く求める「飲食物調理」や「接客・給仕」の有効求人倍率は、全職業を上回る高い数値を示しています。これが、労働市場における外食産業の競争をさらに激化させています。

人手不足に直面する中、企業は「ここで働きたい」という環境を整える必要があります。このようなニーズに応えるべく、くら寿司ではEX（Employee Experience：従業員体験）を重視した体験型研修に注力しています。体験を通じて学ぶことで、従業員のモチベーションを高め、定着率を向上させることを目指しています。

体験型研修の多様な取り組み

くら寿司では、農業や漁業の現場に出向き、実際の体験を通じて学ぶ研修が行われています。このような取り組みは、食材の調達過程や企業理念を理解する上で非常に効果的です。また、従業員どうしの絆を深める機会ともなり、チーム全体のパフォーマンス向上にも寄与しています。たとえば、年間行事として田植えや稲刈りの体験があり、社員は自然の循環を学びながら、食の重要性を再認識しています。

加えて、「KURA-No. 1 GRAND PRIX」という接客や調理技術を競うコンテストも開催されています。これは単なる競争ではなく、従業員同士が切磋琢磨する場であり、店舗のサービス向上にも繋がります。また、参加者たちは仲間からの称賛を受け、自己成長を実感することができます。

新しい採用トレンド

採用の現場でも新たな動きが見られます。特に「ジョブ型採用」が注目されており、企業は求職者に対して「どういう仕事に専念したいのか」を重視する傾向が強まっています。現在は「早期化」や「通年化」が進む中、企業は求職者を待つだけでなく、自ら積極的に情報発信し、人を引き寄せる努力が求められます。

よって、働きやすい環境やモチベーションの向上につながる研修の重要性がますます高まっています。位高く優秀な人材を育成するためには、単なるスキル教育だけでなく、理念の徹底も必要です。転職の背景には、労働条件だけでなく、企業の価値観の共有や成長の機会も大きいからです。

人材育成の未来

今後の人材育成は、体験型の学びをさらに強化し、実体験を通じて理念を体現することが期待されます。くら寿司が取り組む農業体験や漁業研修を通じて、社員が自らの成長を実感し、企業への愛着を深める機会としていくのです。2025年には、初の世界大会「KURA-No. 1 GRAND PRIX」が開催される予定で、これにより国際的な競争力も育成されるでしょう。このように、くら寿司は体験によって得られるエンゲージメントの向上を常に追求し続けています。

以上のような取り組みが、今後の外食産業を支える基盤となることが期待されています。改善の余地のある人手不足の克服に向け、くら寿司の挑戦は続きます。